あなたに逢えてよかった /新堂冬樹 [>あ-な]
この人は本当にプロの作家なのだろうかと疑ってしまったほどの文章の稚拙さ。題材としてはかなりいいものが書けると思うのだが、大根役者、もとい大根作家。くだらない言い回しの繰り返し、変な漢字の使い方、受けを狙っているのだろうが、ただ不適切なだけの比喩、間違った言葉遣い。挙げればキリがない。
恋人が稀な病気にかかったときに、それについて勉強をしない。理想論とは違う生の姿を描きたかったのかもしれないがあまりにも馬鹿すぎる。太陽のように人に明るさを与え、って全くキャラクターに説得力がありませんよ。
あまりの下手さに初めて作家についてWiki検索をかけたのだが、金銭ブローカーとしてかなり成功なさっているよう、そちらの世界を題材にした小説にはかなり人気があるようだ。技術もないのに知らない世界は書かないほうがいいことの証明か、唯一読みやすく、生き生きしているのは僅かの数行、雇われ店長に昇格した主人公が紅茶専門店の経営に頭を悩ませるところだ。的確で無駄のない文章表現がされているのはまさにそこだけである。 Apr. 2010
誘拐の果実 上・下 / 真保裕一 [>あ-な]
誘拐の目的が現物の受け渡しでなければ実は成功する確率は高いことがわかる作品。でも残念なことにたいていの誘拐の目的は現物なので成功することはとても少ないのだった。
家族のあり方、人間としてのあり方を見つめなおすこの話、この前に読んだ本でずと~~んと落ち込んだので少しは救いになってくれた。子供をできるだけ安全に、よい環境で育てたいと普通はどの親も思う。でもつらい環境で育ったほうが強くてやさしい人間になる確率は高いのだろうか。戦渦で育つ子供に引きこもりになっている暇なんてない。目の前で大事な人が死んでゆく体験をしながら、いじめでケガをさせたり殺しちゃったりする子はいないだろう。かく言う自分だって守られて守られて育ってきた。だからよくわからないし、本の中の話を現実に透過することはできないけれど、やっぱり最近そんな風に思うことが多い。 Jan.2010
冷静と情熱のあいだ Calmi Cuori Appassionati [>あ-な]
友達が貸してくれて再読。半分くらいストーリーを忘れていた。映画もたぶん、チラッと観たことがあると思わしくたまに情景が浮かんでくる。たしか順正を竹野内豊がやっていた。
舞台がイタリアというのがいいな。なんたってご飯がおいしい。
以前読んだ時はほとんど気にも留めなかった「外国人」の意味を少し考えた。イタリアに15年住みながらイタリア語を話そうとしなかった(話さなくても暮らせたんだね)アオイの母。アメリカ人会は嫌いでもその生活スタイルは変えず、イタリア人のパーティは苦手なMarv。そして順正もアオイも帰国子女で日本では自己の居場所がかなり不安定である。私は日本生まれ育ちだけど、国が居場所であると言う感覚はよくわからない。東京に出てくる地方の人が「地元」を拠り所にするようなものなのだろうか。同じような感覚はうちの息子は持っているようだ。
アメリカの小説を読むようになって、おばあちゃん達のパワーを知った。再読した今回も、順正の祖父やおば、アオイの周りのおばあちゃん達に尊敬の念をもつ。もうあちらの年齢のほうが近いのだけれど全然なってない自分、がんばれ。
待ち合わせの場所に開館前から来る順正、閉館ぎりぎりに訪れるアオイ。くすくす。 Dec.2009
闇の恋歌 / 菊池秀行 [>あ-な]
ン十年ぶりに読みました。せつら、変わっていません。メフィストもトンブも(え?並べるな?)大好きな人形娘も、みんな健在でした。
今回はカリスマ性のある某架空国の王妃がなんとせつら(のうちの違うせつら、私と自分を呼ぶけれど、いつもの私ではない)が恋をする、話。びっくり。メフィストは早々に死んだことにされるのでやきもちもちょっかいも出せません。
お得意のチタン鋼糸はあまり活躍の場がない。恋歌なので、あまり血なまぐさくもX-ratedでもない。
せつらの恋はどのせつらでもそうだけど、いつも悲しく終わってしまう。(じゃないとメフィストが大変なことになって作者にも収拾がつかないからだろうけれど)久しぶりに楽しんじゃいました。Jun. 2008
紅薔薇伝綺 篠田真由美 [>あ-な]
一作飛ばしてしまいました。ストーリーは1個立てなので問題ないけれど、キャラクターの逡巡が伝わりません。大失敗。
たかだか2千年であごが出ている龍さんも透子と会ってちょっとは気力も出たのか(恋愛方面に触れられると途端に牙ですが)前作で出会ったらしいバチカンのセバスチャンで遊んでいます。信仰について信者ではない人が記すのは大変によいことです。自身の信仰が揺らいでいるセバスチャンの葛藤もとてもよく書けている。
タイムパラドックスについては存在自体が理を超えている龍さんがしていることなので触れません。
飛ばしてしまった分を埋めないと先に進めそうもない。古本屋さんが充実してくれるといいのだけれど。 Jun. 2008
図南の翼 / 小野不由美 [>あ-な]
フルーツバスケット 全23巻 /高屋奈月 [>あ-な]
コミックス表紙は私のお気に入りキャラです。
昔遊んだ(はずの)フルーツバスケットという遊び。椅子取りゲームをベースにした仲間はずれを作る遊びなんだけど、このルールになぞらえて異物とその受け入れを語っています。
設定や絵の上手い下手、ストーリーの展開などは読んでいただくとして、今回の読了で私が気に入ったのは後半どんどん出てくるキスシーン。おばさんです、ほっといてください。少女漫画だから当然、みんな若いんです。自分の手から零れ落ちていってしまったものが、リセットも巻き戻しもできない過去がおばさんには切ないです。
また読み返すことでしょう。何度も何度も、同じ年だったころの自分を思い出しながら、切なさに胸が痛くなるような感情がこの世には存在することを忘れないように。 Mar. 2008
邪魅の雫 / 京極夏彦 [>あ-な]
そう言われる女のほうも、心は時を置き忘れていても現実はもう同年の40代。「嫌いだ」と言われてできることは涙を少しばかり流すのみ。榎木津が預けていった写真の自分は人生の紆余曲折をきっちり曲がれず失くしてしまったことがわかっている。「逢いたかった」とはもういえない…。
榎木津は還ってきて彼女を探したのに逢おうとはしなかった。「自分」を保ちきれなかった彼女にはもう一緒に居たい気持ちをもてなかったのだろうか。彼と結婚すると言うことは財や家柄を継ぐという点では同じことだ。「自分」をなくす彼女を見たくはなかったということか? 彼もまた残酷ではある。でも私は榎木津が一番好きだ。2007.11
帰ってきたアルバイト探偵 / 大沢在昌 [>あ-な]
行方知れずのまま7年たった武器商人の死体がバブルがはじけて閉じたクラブの跡地から発見され、彼が最後の商品として扱っていた核兵器をめぐってロシア、中国、宗教カルトが喧々囂々。隆君もクラブであった孤独な美少女モニカちゃんとフランス語とロシア語のお勉強。最近はお父さんに傾向が似てきてる。
彼が学生でいる限りは(たとえ大学生でも)このシリーズは無難に続けられそう。楽しいし次も出るといいなぁ。 Apr. 2007