The Emperor of Ocean Park / Stephen L Carter

 とても頭のいい人が彼のレベルで書いているので、言い回しが複雑で一文が長く、構成も複雑なので、読むのに結構疲れる。主人公が知識階級によくある優柔不断なので（男はこう有るべきという育ち方をしながらフェミニストで有りたかったりする）内面描写になると話がいっこうに進まない。話は結局、アメリカの黒人と白人の人種差別問題に発し、終わるので、黄色の立場から見るとあほらしい。
また、これが現実なんだろうけれど、マイノリティの中でも層の薄い、黒人種の中産階級で育ったという主人公、白人側からされる差別にはすごく敏感なのだけど、「ボクは白人女性とは結婚しない」などとちゃらっと言ってのけたりする。これを意識して描いているのなら、この「黒人」作家はすごいな。
そして中産階級のスタンダード！ １２室もある家に住んで、妹の家は子沢山だから、オゥ・ペア（留学制度の一種で、子守をする代わりに語学学校へ行かせてもらえる、期間は一年）がいてハウスキーパーと料理番がいる。これが中産階級なら、うちは貧民だ。ちっ。
彼と、それに怯える人々が追いかける父親の「アレンジメント」と、ひき逃げ事故で若くして亡くなった妹の、逮捕されなかった犯人への父親の復讐がきっと噛み合うと思っていたのに不発に終わってクライマックスが盛り上がらなかった。　Oct. 2005