The Piano Shop on the Left Bank / Thad Carhart [>A-D]
副題:Discovering a Forgotten Passion in a Paris Atelier
流れてくるセーヌ河で舟に乗って右側が観光地が多い右岸。左側が居住地が多い左岸。作者が住む一角があるのがこの左岸。幼稚園に子供を送る当番の日に通りかかる古びた工房…。
アメリカ人である作者が英語でフランスの職人気質を説明するのだが、言葉というのは使うことで発達するのだと認識させてくれる。たくさんたくさんいろんな言葉や言い回しでたぶんアメリカ人には理解しがたい、欧州スノビッシュとよく言われる(対語は成金メリケン?)彼らのものの考え方を説明していて、苦労していますね、と苦笑してしまう。たまにはとうとう投げ出して、いきなり仏語だったりする(Google language toolさん、第二外国語に仏語を取ってる我が家の一員、ありがとう)。日本人の私には、職人気質や一見さんお断り(ほら、ちゃんと言葉がある)は理解できるので、その辺は苦労しなくて済む。おかげで、作者のピアノへの再帰や数々のピアノメーカーの特徴や歴史を楽しむことができた。(そう、自分のためにピアノを弾きたい人だっているのだ!)
読んでいて気持ちがいいのは、作者はかなりアメリカ人だし、ピアノ職人のLucは思いっきり(当然)フランス人、でもお互いの違いをユーモアを持って受け入れていて、「寛容」の精神が生きているからだと思う。
あえて難を言えば、まさか読者にわかりやすくなんて思ったわけではないだろうけれど、出てくる曲がモツアルトやベトベンなど有名な曲ばかりだったのが、間口が小さいけれど中が豊かなピアノ工房のイメージとそぐわなくて少し、んーー、だったかな。(Ravelのジョークはよかったよ) Jul. 2008
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