ローマ人の物語 Ⅰ~ⅩⅤ [塩野七生]
読み終わりました!読み始めたときは1冊ずつでしたが、居住地移動で購入が難しくなり、10年後に一気読みになってしまいました。
ポイントは「キリスト教信者」「キリスト教界で生まれ育った者」でないという視点。中盤までの興隆期から安定期までの中ですら、ものの見方に違いが見られる。資料を見るときの観点がちがうのだろう。それに衰退期にかかって、キリスト教がローマ帝国の滅亡の原因であるとはっきり言い切ることができるのは強味だ。
ユリウス・カエサルがローマ帝国の長命の基盤を作ったのは確かで、彼女がカエサルの大ファンだということは周知である。しかしもう少し他の人たちと同じくらい冷静に見つめて欲しかった。カエサルは為政者としてほとんど完全無傷である。しかし、「できる」人間にありがちな陥穽として、「できない」者の必死を侮ってはいなかったか。事半ばにして若造に暗殺されている場合ではなかったと思うのだが。
「海の都の物語」を何度も読み返すように、この作品もまた読み返すことだろう。 Jul. 2008
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